大日本帝国と国際連盟はなぜ失敗したのか?

今日の授業では、国際連盟について話をした。
そのために、元外交官の小倉和夫さんの書いた『吉田茂の自問 敗戦、そして報告書「日本外交の過誤』(藤原書店、2003年11月)をもう一度読み返してみた。
1951年1月、当時の吉田茂首相は「日本外交は、満州事変、支那事変、第二次世界大戦というように幾多の失敗を重ねてきたが、今こそこのような失敗の拠ってきたところを調べ、後世の参考に供すべき」という考えに基づき、満州事変以来の日本外交を検証し、その問題点を明らかにするように外務省の斉藤鎮男政務局政務課長に指示した。
その結果、生まれたのが「日本外交の過誤」と名付けられた調書である。
 
『吉田茂の自問』は、2003年4月に公表されたこの調書を検証した作品。
 
調書は、満州事変の根本原因を日本国内の深刻な経済不況と政党政治への不満、そして中国における激しい排日運動にあったと分析するが、武力衝突を回避するための具体的な外交政策を提起してはいない。
これに対して、小倉氏は、当時の日本が中国ナショナリズムの勃興にきちんと対処できず、満州事変を止め得なかったのは、正しい歴史観に基づいた対中外交の不在が原因であったのではないかという見方を提起する。
当時の日本は帝国主義的外交を依然として捨てていない列強と同じ目線で中国を見、中国の犠牲において日本や列強の発展を図ろうとする外交に傾いていたがゆえに中国の国権回復運動に対する同情と共感の上に立った対中国外交が出来なかったのではないか、というのが小倉氏の解釈なのである。
一方、小倉氏は当時の日本が中国の民族主義に理解と同情を以って臨むためには、ウィルソンの外交理念に沿った国際秩序の確立に共同で努力する道しかなかったが、この米国の理想主義の裏には人種主義がひそんでおり(1924年、米国は排日移民法を成立させていた)、当時の日本国民に米国との協調路線を可能とするウィルソン的な国際協調への信頼を植え付けることは至難のわざであったろうことを指摘する。
しかし、小倉氏の見方は、ウィルソンの外交理念以外に東アジア諸国と対等な見方を可能とする外交理念はない、あるいは日本はそのような理念を生み出す能力はないという見方ではないかという気がする。
まぁ、大東亜共栄圏構想しかなかった当時の日本を振り返れば、確かにそういう見方も一理あるような気もするが、しかし、日本社会には独自の構想を生み出す能力がないということはない気がする。
ただ、当時の日本では代議制民主主義とか基本的人権の尊重といった近代社会にとって不可欠な社会的資本が十分に発達していなかったために、人々が短絡的な暴力的社会変革路線に同調してしまったのであって、もし当時の日本に精神的に成熟するための時間がもう少し与えられていたら、そして社会的不平等を修正する経済政策についてもう少し理解があれば、あるいは日本は別の道を選ぶことができたのではないか、とも思うのである。
ただ、当時の日本の精神状況、経済情勢を描いた本を読むと、やはり個人も国も多くの失敗を重ねながら学び、成長していくしかないのかも知れないとも思う。
第二次世界大戦後、戦争責任の清算においては世界の最優等国として賞賛されるドイツだって、第一次世界大戦のあと、ナチを生み出すことは阻止できなかった。過酷な賠償金を課されたこと、ワイマール憲法に思いもかけない穴があったこと、ドイツ国民自身が第一次世界大戦の戦争責任を真摯に受け止めなかったこと、1929年からの世界恐慌の影響を受けたことなど、客観的にも不幸な条件が揃ったことは事実である。
しかし、やはり、ドイツは第二次世界大戦を経て、初めて戦争責任を真摯に受け止める覚悟ができたというのは、やはり歴史的な事実なのだろう。
 
ただ、日本について言えば、第二次世界大戦を経て結局、日本は米国主導の世界秩序の中で生きることになったわけなのだから、今から全く第三者的に考えれば、戦争をせずに米国の陣営に参加するという道だって有り得たのではないか、と思ってしまうのも事実である。
そもそも、「国家に友人はいない」というのが外交の基本なのだし、国民感情レベルでの好悪は別として米国と隠忍自重して友好関係を結ぶことは、やはり当時の日本では無理だったのだろうか。
 
まぁ、次々と疑問が湧いてくるのは、この本が取り上げているテーマが現代日本にとって、やはり依然生きた重要な問題であるせいであろう。
 
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