ひとが死ぬとき、意識の身体、無意識の身体

この3連休は、ずっと身体論を調べている。
11日の平和学会(山口大学)で自分が司会をする非暴力分科会でのテーマが身体性であるからというのが目先の理由。
ただ、もう少し根本的な理由は、その後19日に予定されているアジア女性会議(北九州)での報告、そして、そのあと25日に予定されている日本法哲学会での発表内容に関連するのだけど、要するに人間にとって身体とは何なのか?ということを少しはっきり考えておきたいということである。
 
『現代思想』10月号に脳神経外科学の片山容一先生のインタビュー記事が掲載されている。
その最後の方で片山先生はこんな風に語っている。
「私は「ご臨終です」と申し上げる立場にずっと立ってきた人間です。あの時点では、けっして完全に死んだわけではありません。本当の死は、家族が死を受け入れたときにやってくるのです。」
「わたしは、誰かに生きていると思ってもらってる限り、その人は生きていると考えています。もともと、人はそうやって生きているのではないでしょうか。」
 
昨日、久し振りに養老孟司『日本人の身体観』(日経ビジネス文庫)を読み返した。
養老先生がこの本を書いた最初の動機は、現代日本社会に浸透している「死体=モノ」という考え方に対する怒りというか不満、不安であるように思われる。
解剖学者である養老先生は死体を「モノ」と考えたことはないと書いている。
死体も「ヒト」であるという考え方は、何故、現代の日本社会で受け入れられなくなったのだろうか?
『日本人の身体観』は、この疑問を解明すべく書かれた本であるように思われる。
 
理性によって管理不可能なものを抑圧ないし周縁化することで「近代」は成立したという見方がある。
その意味では生老病死という現象を体現している「身体」を近代社会、より正確には人々を管理しようとする近代のシステムが不可視化しようとしたというのは何となる分る説明ではある。
しかし、そうなると18世紀のロマン主義は「感情」を重視することで、「身体」の復権を目指した運動であったということになり、近代=理性重視の啓蒙主義+感情重視のロマン主義というテイラーの近代理解からして、近代=身体性の抑圧という簡単な解釈は成り立たなくなる。
ただ、身体の主体が国家になったとき、近代は超国家主義に陥ったという歴史解釈はどこか頷けるものがある。
身体が一人ひとりの個人そのものから、権力によって統制されるべきものとなった時、その統制から抜け落ちる身体性は抑圧されるというのは、まぁ、分る。
それは、どういう身体性かというと性であったり、死であったり、病気であったり、権力によっても管理不可能な身体性である。
自己心理学の創始者として知られるコフートは、フロイトが生きた時代を「増大する政治的自由、思考の自由の時代であると同時に、専制的な神秘的信仰の力が抑圧された時代」であったとして、この社会文化的な層構造が論理の理性の適用し得る「意識」と、認知することが困難で抑圧される「無意識」という二分された「心(サイキ)」の理論を生み出したと分析している。私の本『人権をひらく―チャールズ・テイラーとの対話』(藤原書店、2005年)では145頁辺りで、このことを取り上げている。
要するに身体には「無意識」の身体と「意識」の身体があって、18世紀から19世紀にかけて、「無意識」の身体が抑圧され、一方で「意識」の身体の主体が個人から国家へ移行した結果が超国家主義だったと言えるのではないか。
そして、少なくとも「意識」の身体が個人の中にとどまり続けた国家では民主主義が超国家主義に取って代られることはなかったのである。
 
昭和6年(1931年)当時、東大教授であった河合栄治郎は共産主義がイギリス、アメリカ、フランス、オランダ、ベルギーにおいて殆ど勢力がなく、ドイツ、オーストリアでは相当な勢力を持っており、ポーランド、ルーマニア、ロシアそしてインドや中国では非常な勢力を持っているという事実を指摘した上で、「言論の自由がはっきり行われているところではプロレタリア独裁主義は勢力をもたない」と述べている。
 
言論の自由とは良心の自由を対外的に保障するもので、いずれも精神の自由として他の自由権より高い保護が与えられることになっている。
言論の自由は、意識の身体に属するものとして分類できるのではないか?
そして、無意識を通じて身体を管理しようとする試みが様々な官製の儀式なのではないだろうか?
 
まだ、完全には納得はいかないのだけど、とりあえずは「意識の身体、無意識の身体」でまとめていこうかなぁ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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