日本型近代国民国家の作り方

今朝、この連休に届いていた日本国際フォーラムの速記録を読んだ。
今年3月22日に行われた『「歴史認識」問題に関する意見交換のための拡大緊急提言委員会』の記録。
テーマは、もちろん「さきの大戦」に対する日本の戦争責任の問題である。
会の冒頭で司会の田久保忠衛先生が参加者に冷静な討論をお願いしているのだけど、こういうテーマになると、参加者はたいへんエモーショナルになる。
この会もそうであったようだ。
 
私が昨年12月に参加したコミュニティベースのトラウマ・ケア・ヒーリング・ワークショップでも、日本の戦争責任の話になると、参加者は一気に熱くなり、これは一種のナショナルトラウマ、マストラウマの一種なんだなぁ、と思った記憶がある。
 
昔、石原莞爾『最終戦争論』(中央公論新社)を読んで、1930年代の日本では日米対決は不可避であるという認識が広がっていたことにびっくりしたことを思い出した。
 
まぁ、当時の日本は1933年3月12日に脱退するまで国際連盟の常任理事国であったわけで、今の国連の英米仏露中と同じステイタスを持っていたわけだから、鼻息が荒かったのも当然といえば当然。
 
トランセンド法を提唱している国際政治学者のヨハン・ガルトゥング先生は、日本社会の特質として陰陽道的(二元的でないこと)、垂直的(人間関係、社会関係をタテの関係で捉えがち)、実務的(物事の状況が悪化してきても、その中から良い条件を拾い、状況を改善することができると考えがち)の3つを挙げている。
ただ、この中で垂直的という点について、これまでの日本人は欧米を高く評価する一方でアジアを低く見るという傾向があったのに対して、最近の若者の中にはアジアに対して対等な感覚を自然に身に付けている世代が増えているというコメントもしている。
 
自分は、この垂直型の発想を転換することこそ、今後の日本にとってのカギであるような気がする。
そもそも、従来の座標軸によると、現在の日米同盟も日本は米国に負けたから、そして米国は強いので取りあえずアタマを下げているということになり、本心から米国を信頼しているわけではないということになる。
そうして考えると、最近の米国の日本のナショナリズムに対する警戒心は十分に根拠があるということになる。
確かに、戦後の日本社会が陥った盲目的な米国依存は、「盲信とは本当は信頼していないこと」という心理学の基本から考えると、本当は好きでもない相手と一緒に暮らさなければならなくなったので、判断中止をして、自分の本心を抑え込んだと考えると、何だか、とっても分かるような気がする。
 
多分、今の日本にとって重要なことは、この物事の捉え方(パラダイム)を変えることなのだ。
そのために有効なのが、実は「民主的な、平等主義的な道徳国家(moral state)」という観念なのかも知れない。
この辺りは戦前の軍国主義への感情的反発から、日本のまともな知識人はほとんど正面から取り上げていない。
 
ところが、テイラー教授とムンターボーン教授は、このことをタイの民主化のために活用すべきであると1994年に提言している。
 
何でこんなことを考え始めたかというと、日本国際フォーラムの会談で、河東哲夫さんが日本という社会は、もともと戦争遂行のために作られた面が強い西欧型の近代国民国家を運営できる性質にないと発言していることに触発されたため。
 
まぁ、戦前の日本を考えると必ずしもそうではないという気もするけど、ここで考えたのは、日本型市民社会を生み出すためのプロセスである。
 
高橋一生先生は、『国際NGOが世界を変える』(東信堂)へ寄稿された論文のなかで、公私、営利・非営利を峻別するアングロサクソン型市民社会モデルに対して、政府、企業、NGOが対等なアクターを目指すヨーロッパ大陸型市民社会モデルを提示した。
まぁ、日本の場合は政府と企業、NGOが対等なアクターを目指すといってもなかなか難しいし、政府の家父長主義の隠れ蓑にされてしまう可能性が常にある。
しかし、最近の日本社会が急速に中央政府主導の国家経営からそれぞれの組織、個人の自己責任を問う分権体制に移行しつつあることは事実で、これが米国発グローバリゼーションの圧力のせいであることも間違いがない。
 
分権化が生み出す個人主義によって社会の一体感が弱まるのを愛国心教育で補強しようというのが、現在の日本政府の方針だと思うけど、垂直型思考をそのままに愛国心教育を強制すると戦前のような統制社会が生れてしまう。
 
結局、水平型思考を強化しつつ、自発的な愛国心を育てる以外にはないのだ。
 
水平型思考を育てるというのは、要するに多様な人間の間の平等性を承認するということだから、これは人権の思想そのものである。
でも、そこにいたる道筋はそれぞれの国、文化、個人によって異なっていて当然。
 
その辺りが、今後の日本を考える上で、面白いポイントかもね。
 
 
 
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