伊藤元重『グローバル経済の本質』

昨晩、この本が届いた。
伊藤先生は、まだ東大の助教授だった頃、イスラエルを訪問されたことがあり、当時、在イスラエル日本大使館で書記官をしていた自分がお世話をさせていただいたことがある。
専門の研究だけでなく、教育活動にも熱心な、そして温厚な人柄が当時からたいへん印象的な先生だった。
 
その伊藤先生が書かれた、この本。
何よりも、バランスの取れた記述が印象的。
時事的な内容の本の中には、時々極端な主張があったり、現状分析にバイアスがかかっているように思われるものもある。
 
伊藤先生の主張は、グローバル化は自動車や火薬と同じで、プラスの面と、マイナスの面の両方を持っているが、我々はその両方を自覚しながら、最大限、グローバル化を活用しなければならないという、至極もっとなもの。
その上で、現在の日本社会の閉鎖性がグローバル化する世界経済の中で日本がさらに発展することを妨げている面があることを、農業問題や外国からの直接投資の少なさなど具体的な事例に基づいて指摘している。
 
つい1カ月ほど前、私はWTOとFTAに関する国際シンポジウムに参加した。
そこで、外務省の担当課長が、グローバルな経済自由化のための話し合いの枠組であるWTOと、二国間、地域間の自由貿易の取り決めであるFTAが当初は相互に対立すると懸念していたが、実際には相互に補完的なものなのだということが分かったと話してくれたのだけど、伊藤先生はその辺りのこともきちんと書いていて、いわゆる理論先行の机上の空論にはまったくなっていない。
 
そして、何よりも経済学の専門知識がない人間にも分かるように、平易に書かれているのが特色。
大学の研究者というのは、研究活動にプラスにならないという理由で教科書を書くのを嫌がるということを聞いたことがあるのだけど、伊藤先生はイスラエルを訪問された時、同僚と経済学の教科書を書いているという話を、それは楽しそうに話されていたことがある。
昔から、人を教えることに対して情熱をお持ちだったことが、こういう本を書くときにも現われるのだなぁ、と感心した。
 
 
 
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