トマス・バーネット『戦争はなぜ必要か』講談社インターナショナル

 日本の国防戦略を含む外交方針が、日米関係を前提に構築されているのは周知の事実。
 
この米国の世界戦略ないし国際安全保障戦略が90年代以降如合何に変化してきたかを知る上で有益な本がこれ。
トマス・バーネットはアメリカ海軍大学教授で上級戦略研究家。
 
バーネットは、グローバリセーションの進展に伴い、世界はその恩恵をこうむる地域(ファンクショニング・コア)と、グローバル社会からこぼれ落ちた地域(ノン・インテグレーティング・ギャップ)、そしてその境界に位置する地域(シーム・ステイツ)に分かれつつあると考える。
このコア地域に存在する国が米国の脅威となることはないというのがバーネットの診断。その中にはロシアや中国も含まれている。
一方、ギャップ地域に対しては必要に応じて先制攻撃を含む積極的介入を行なうことによって、ギャップ地域に潜むコア地域に対する危険因子を除去し、ギャップ地域にもコア地域と同様なルールが適用されるような変革を促さなければならないと考える。
その結果、米軍を含むコア地域の軍隊は、ギャップ地域に存在する国際安全保障に対する脅威(専制君主とかテロリスト支援政府)を除去する実力部隊(リバイアサン軍)と、紛争後のギャップ地域における治安維持、人道支援、国家再建を目標とする部隊(シスアド軍)に二極分化することになるとバーネットは考える。
 
この世界戦略の中で日本の自衛隊は、英国軍のように米軍と共にバイアサン軍として行動を共にすべきなのか?
そもそも、言葉のギャップ、文化のギャップがあって、とても即応性の必要な戦場での共同作戦は無理だろうと思うのは素人の見方だろうか。
紛争後の平和構築、人道支援、国家再建のための行政面でのサポートのほうが、日本の強みが生きそうだよなぁ、と思うのは自分の個人的な偏見だろうか。
もちろん、紛争後の平和構築でも生命の危険はあるわけで、どのみち、宮沢元総理が言われていたように、人間の自由とか尊厳を守るためには血を流す用意は必要である。
そして、シスアド軍のような役割は自衛隊だけで担うことは出来ないのであって、平和構築、政府機能の再建などの専門家が、国連や国際NGO、多国籍企業などとの緊密な連携の下で取り組むほうが間違いなく効果が高い。
バーネットも、そのような役割をシスアド軍に期待している。
 
こういう本を読むと、日米同盟を前提にした国際安全保障への日本の貢献策を考えるためにもグランドデザインに基づく構想力が必要ではないかと思わされる。
そのようなグランドデザインを描いた上で、その実現にとって現在の憲法9条が妨げとなるかどうかを考えるというのが、より生産的な議論の方向なのではないか。
 
また、中国が今後の北東アジアにおいて軍事的な脅威となる危険性がほとんどないとすると、日本の対外戦略もだいぶ違ってくるのではないか?
それにしても、政府間はともかく、国民レベルでの戦争責任の精算という課題は残るだろうな。
 
それはともかく、日本だって米国に負けたおかげでファシズム体制を精算して、自由民主主義の国に生まれ変われたにもかかわらず、戦後60年も経って、いまだに今の憲法は米国によって押し付けられたものであるという怨念が残っているくらいだから、暴力による一時的な解決というのは、それが正しいものであったとしても、後にしこりを残して、本当の解決にはならないというのが歴史的な事実だろうね。
 
バーネットも、何でもかんでもリバイアサン軍の実力で排除してしまうのが最善の方法などとは言っていない。
 
全ての平和的・非軍事的手段を講じて、なお解決できなかった急迫不正の脅威に対してのみ軍事力を使うというのが、結局は正しいのではないか。
 
 
 
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