天の浮舟

12歳の日本の男の子、たっくんは商社マンであるお父さんの転勤で、東南アジアのある国に転校してきました。
 
ある休日、たっくんはお父さんと町のはずれの森の傍で開催された熱気球大会を見物に出掛ました。
そこで、たっくんは以前ひとに追われていた女の子が出発寸前の熱気球に飛び乗ろうとしている場面に出くわしたのです。
女の子を助けて、熱気球に飛び乗ろうとしたたっくんを、広場で大道芸をしていたピエロが助けてくれました。
たっくん、女の子、そしてピエロを乗せた熱気球は、空に舞い上がりました。
熱気球は地球の形をしていました。
ほっと一息ついた女の子とたっくんに、ピエロのおじさんは、自分のことを熱帯林の案内役を務めるさすらいの道化師と自己紹介をします。
三人は、日本を目指して旅を出掛けることにしました。
 
たっくんと同じ年の女の子は森に暮らす少数民族の娘で愛称はチムー。
ところが、ある日、チムーが住んでいた村から町まで広い道路が建設された結果、森はどんどん伐採されるようになりました。
森林の伐採に反対する村には何百人もの人が襲いかかり、チムーのお父さんも、その時、亡くなったのです。
そして、生活が成り立たなくなった村人の中には自ら森林の伐採に携わる人も出てきました。
チムーの家も、お父さんが亡くなって、生活が苦しくなりました。
家族を助けようとチムーは子守の仕事があると聞いて、町に働きに出掛けることにしました。
でも、チムーを待っていたのは、子守の仕事ではありませんでした。
チムーは、地獄のようなその生活から逃げ出そうとして、熱気球に飛び乗ったのでした。
熱気球の上で、チムーは「わたしが星なら、小さな、小さな光を心に灯して光りましょう」と唄います。
 
突然、チムーが高熱を出します。
熱気球は病院のある日本に向けて全速力で飛び始めました。
 
気がつくと、朝がやって来ていました。
熱気球は日本の高層ビルに近づいていきました。
 
ビルの屋上に着いた熱気球の上で、ピエロは言います。
「私は娘を助けるために、少しだけ向こう側から帰ってきたんだ」
「チムーをよろしく」
 
二人を残して飛び立った地球の形をした熱気球が海の上に出ると、熱気球に向けて何発もの弾丸が打ち込まれました。
 
穴だらけになった地球は静かに海面に落ちていきました。
 
でも、ピエロはもうどこにもいませんでした。
 
 
 
 
 
 
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