E.H.カー『危機の二十年』

我が家の桜も満開です。
最近、ふと思い立って、E.H.カーの『危機の二十年』を読み返してみた。
この本。
もちろん、外交官を目指す者にとっては必読の本の一つで、自分も昔、外務省の試験を受ける前に図書館で読んだ記憶がある。
もっとも、当時の自分にどれほど、この本が理解できたかは、また別問題である。
 
現実社会の中で揉まれて初めて本当に理解できる事実というものもある。
この本は、第一次世界大戦の終結時から第二次世界大戦の始まりまでの時期を取り上げた、国際政治経済学の古典ということになるのだけど、そこに盛り込まれた洞察は、この20年間を超えて、一種の普遍性を持っている。
大体、論文とか本というのは特定のテーマや出来事を対象としているのだけど、優れた作品は個別性を超えた普遍的な洞察が必ず含まれている。
もっとも、これは「言うや易く、行なうや難し」であって、そういう一流の論文や本を書くためには、本当に努力が必要だし、一種のセンスや運もなければいけないと私は思っている。
 
それはともかく、この『危機の二十年』。
「国際政治は、つねに力の政治である。しかし、それは事実の一端でしかない」という有名な一節がある。
E.H.カーは、「人間にかかわる事柄が、人間の行為と思考によって方向づけられ修正変更され得ることは自明である」という経験主義的な人間観、社会観に基づきながら、「あらゆる政治的事態は、ユートピアとリアリティ、道義と権力という両立しない要素をふくんでいるのである」という洞察を提示する。
こういう風に社会や人間を観察できるようになるまで、ひとは多くの時間を社会的葛藤やトラブルの中で過ごす必要があるように思う。
また、E.H.カーという人がこういう見方を提示できたのは、彼が国際政治の中枢であった当時の英国に生きていたからだろうと思う。
現実の国際政治の中の主要なプレイヤーとして格闘し続ける国の知識人として、彼には単なるユートピアンにとどまることはできなかったのだろう。
 
国際政治の舞台から滑り落ちようとしている現在の日本にとって必読の書の一つである。
 
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