弓削達『ローマはなぜ滅んだか』

この本は、1989年末に刊行されたものである。
まだ、バブル経済の中にいた当時の日本では、多くの人々が今や日本は米国を凌ぐ国力を持つに至ったと錯覚していた。
 
慧眼の西洋古代史の研究者である弓削先生は、しかし、繁栄の絶頂にあった日本と古代ローマを重ね合わせることで、日本が誤った選択肢を選べば、日本も古代ローマのように滅ぶであろうという警告を、この新書に託して発したのである。
 
<長年の苦労ののち、やっと「中心」に位置した日本が、新興工業国や東南アジア等の第三世界を、自らの位置をおびやかす敵と見るか、それとも、「日米新時代」の次の文明世界を作り上げてゆくパートナーと見て、いま彼らの難局に、目前の大損は覚悟で、手をさしのべるか、という選択に、われわれの明日はかかっていると思われるのである>
 
20年前の弓削先生の見通しは、その後、正しかったことが証明された。
「失われた10年」を経て、巨大な経済格差を国内に生み出しつつあるこの国は、日米関係を含めた自分の「国のかたち」について、真剣な再考と求められている。
 
世界の現状というものは、経済面、政治面だけで見ていたのでは理解することは出来ない。
制度、理念、権力。
世の中は、さまざまな要素のダイナミクスで変化するものである。
歴史は、われわれが現在、そして未来を理解する上で、有効な、さまざまな視座を与えてくれる。
 
しかし、その上で、どのような未来を選択するかは、現在に生きる人々の決断にかかっているのである。
 
テイラーが書いているように、「未来とは、過去にともに自らが決めるもの」なのである。
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