菊池理夫『日本を甦らせる政治思想 現代コミュニタリアニズム入門』

この本は、千葉大学の小林正弥先生や中野剛充さんと並ぶ日本屈指のコミュニタリアニズムの研究者である菊池理夫が書き下ろされた最良の現代コミュニタリアニズムの入門書である。
菊池先生は先ず、政治イデオロギーとしての「右派」「左派」の違いを、ノルベルト・ボッビオ『右と左』(お茶の水書房)に基づいて解説します。
現代の政治的イデロギーは自由と平等を巡る立場によって4つに分けられます。
「極左」 平等主義と独裁主義
「中道左派」 平等主義とリベラリズム
「中道右派」 不平等主義とリベラリズム
「極右」 反平等主義と反リベラリズム
この分類に基づくと、現在の自民党は中道右派であるというのが菊池先生の見方である。
確かに、自由主義を尊重して、経済格差を容認する小泉、安倍政権の路線は「中道右派」と言えると私も思った。
 
その上で、菊池先生は、日本には明確な「中道左派」の思想的基盤がないことを指摘して、そのために現代コミュニタリアニズムを導入することが必要であると主張する。
菊池先生は、現代の代表的なコミュニタリアンとしてアラスディア・マッキンタイア、マイケル・サンデルと並んでチャールズ・テイラーを取り上げている。
菊池先生のテイラー解釈で的確だと思ったのは、テイラーが基本的に西洋近代化の方向性を肯定していること、「共通善」としての「愛国心」(パトリオティズム)が大切であると考えていることを指摘している点である。
いずれも、現代日本の左派リベラルと呼ばれる知識人が否定的に見ている点で、テイラーが日本社会になかなか受け入れられないのも、この辺りに理由があるのかも知れないと思った。
 
興味深いのは、現在、カナダの自由党副党首を務めるマイケル・イグナティエフがやはり「西洋近代化の方向」を基本的に肯定していることである。
もちろん、私も同じ立場である。
ただし、イラクに対する米国の武力行使を容認したイグナティエフは中道右派ないしリベラルホークであって、その点でテイラーとは異なっている。
 
わたしがイグナティエフとテイラーを自分の研究対象として選んだのは、広範な文献サーベイの結果ではなく、たまたま本のタイトルとかちょっと読んでみた著書のトーンが自分の感性に合ったというだけのことなのだけど、人間というのは自分が好きなタイプを無意識のうちに選ぶものらしい。
二人とも実践的な思想家であり、傍観者ではなく、当事者として常に考え、ものを書いているところが私の感性にはぴったりする。
この春の政治思想学会では、イグナティエフについて報告させていただくことになっている。
楽しみなことですねぇ。
 
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