児童ポルノ(3)

mkさま。
長文の、そして精緻な議論をありがとうございます。
 
実在の子どもを被写体としてポルノの問題について。
mkさんが指摘されているように、「単純所持」という言葉がミスリーディングであるという指摘は、アメリカンセンターのセミナーでも出ていました。
その観点から現在の与党案を見ると、「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者は」と所持の目的を明確化しています。
また、第三条中「留意しなければならない」を「留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」に改めることになっています。
Wikipediaの解説によると、これは自民党PT内での議論を踏まえた修正だそうで、このPTに参加している早川忠孝議員も、そのように書いています。
mkさんの懸念は、この与党案で、かなり晴れるのでしょうか?
それとも、この規定では、まだ濫用の可能性があるとお考えなのでしょうか?
 
ちなみに、アメリカンセンターのセミナーで配布された米国議会調査局のレポートが駐日米国大使館のHPにアップされていますので、お知らせ申し上げます。
このレポートによると、表現の自由を定めている合衆国憲法修正第1条は、児童ポルノと猥褻(obscenity)には適用されないとあります。
米国の定義によると、児童ポルノとは「一定の年齢に満たない児童による性的行為を視覚的に描写した」情報・素材であり、それらの情報・素材は猥褻でない場合でも合衆国憲法修正第1条の保護を受けないそうです。
また、「猥褻」とは、「明らかに不快なハードコアの性的行為を描写または記述」していることが必要で、ミラーテストと呼ばれる3つの要件を満たす必要があるとされています。
(1)平均的な人が、その所属する地域社会などのコミュニティのそのときの基準に照らしてその表現物を見た場合、全体として好色な興味に訴えていると考えるか
(2)その表現物が、当該州法によって明確に定義された性的行為を、明らかに不快感をえる方法で、描写または記述しているか
(3)その表現物が、全体として見た場合、まじめな文学的、芸術的、政治的または科学的価値を欠いているか
 
一方、日本の児童買春・児童ポルノ等禁止法における児童ポルノの定義(2条)は以下の通りです。
  一

 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの
 

 

 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの
 

 

 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの
この2条3項1は米国の児童ポルノの定義と同じです。
一方、2条3項2&3に関して、米国では、「児童ポルノ」を、未成年者を関与させる「性的なにあからさまな行為」の「視覚的な描写」であると定義し、さらに「性的にあからさまな行為」とは、さまざまな性的行為だけではなく、「人の生殖器あるいは恥部の猥褻な展示」を含むと定義しています。
さらに、「人の生殖器あるいは恥部の猥褻な展示」は、「裸体の展示またはそれらの部位が衣服を通じて認識できる展示」に限定されると定めているそうです。
この児童ポルノの定義とそれに関連した課題については、もう少し調べてみたいと思います。
 
 
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児童ポルノ(3)」への4件のフィードバック

  1. アニメ、漫画、ゲームなどにおける表現の規制、もしくは、人間キャラクターの規制(獣人、ドラゴン、ロボット、恐竜、動物など人間じゃないキャラはセーフ)なら、別に構いませんよ。ですけど、単純所持の規制には、反対です。いろいろ、理不尽なことになりかねませんので。貴重な、子供の命を守るのは、非常に大切なことではあります。でも、単純所持規制で、犯罪が減るとも限らないかもしれないし・・・。

  2. 私の書いた文章に対して、何度も返答を頂きありがとうございます。「所持の目的が明確化されている」との事ですが、懸念はまだ晴れません。これでも警察の不当な逮捕などが起こることは容易に想像できますがこれなら大丈夫だよ、と仰るのでしたらもう少し論拠を示して頂けると納得できるかもしれません。私には、禁止物を所持していた場合の「条件付け」がまだまだ甘いように感じます。現在の警察では、被疑者への取調べ過程の公平さには大きな問題があります。今も取り調べの全過程をビデオ撮影するかどうかで揉めてますよね。それから、松議員が銀行の中小企業への融資云々の話題で言っていましたが「銀行員には内部的な評価ポイントがあるため、相手がどんなに困っていようが、中小企業へは融資を渋る」と。警官にも評価ポイントがあるようです。また彼らは特に「面子」を重んじます。いったん嫌疑をかけた者を容易には釈放しません。取調べ官から浴びせられる罵声には恐怖を感じ、反論もなかなかできないようです。結果として釈放されても、職場や家庭、友人間でのこれからの生活に重大な影響がでます。捜査関係者の解釈や認識の違いで逮捕されてしまう状態には恐怖を感じます。ですから「所持の目的が明確化されている」件で懸念が晴れるとしたら、これは児童ポルノ規制の話だけではありませんが被疑者への取調べ過程が完全にオープンで公平になっていることまたそうすることが当たり前だと捜査関係者の間でも常識的に認識されていることが広く浸透しているならば、ですね。簡潔に言うなら、日本ではまだ単純所持を行うには「取り締まる側」の知識や意識が成熟していません。規制推進派の方々には、その法が施行された場合の弊害や矛盾を皆無にすべくさらに踏み込んだ細かい検討をお願いしたいところです。上に加えて補足するなら、前回のコメントにも絡めて書きますが①規制対象物への違法or適法の境界が具体的かつ理論的に定まっていること②事故や無意識による不当逮捕を生んでしまう状況を無くすため、技術的な問題が解消されていること。も前提として必要かと思いますが、まだ環境が整っていないのが現状ではないでしょうか。※②は主にPCウイルス対策やブロッキングソフトの機能設定などのネットワーク上の課題のつもりです。さて、米国議会調査局のレポートですがいかに表現の自由といえど、実際にいたいけな2.3歳の幼児が性的虐待を受けているような物には適用されなくて当然な気がします。賛成です。先生方が、日本でもこういった事を無くそうとご活動なさっている事は支持いたします。ですがこの場合、「児童の定義」が問題になってきます。たくさん海外の例を出されますが、「子供を守る」ことに対しては異存はありませんがではこの”子供”というのはどのような状態の人物を指すのか。2.3歳の幼児を見て「どう見ても大人だ」という人は極少ないでしょう。しかし18歳の女性を見た場合はどうでしょうか?「18は大人だよ」「いや子供だ」「大人じゃないけど、児童でもないよね」と意見は別れるでしょう。あくまで個人的な意見ですが、私や私の周辺では「18が児童扱いはないだろ」という意見が大半です。いたいけな幼児を守る為の規制強化、大賛成です。ですがそのためには「児童の定義」を見直していかないといけません。今の児童(未成年)の定義のまま規制強化を求めても、おそらく支持する人は少数でしょう。重ねて書きますと、先進諸国では”未成年の定義”とは別に児童ポルノとして扱われる対象の年齢があります。多くの国は13~16歳ですね。またしても個人的な意見で申し訳ないのですがこの辺りの年齢設定だと、日本でも多くの人が納得して支持してくれるのではありませんか?また見逃せない例として、アメリカでは漫画・アニメなどのいわゆる絵(2次元)の創作物に関しては表現の自由によって守られている点は重要ですね。私は、対象者が実在しないバーチャルな創作物には、一切の制限を設けるべきではないと考えています。2次元創作物に関してアメリカを例に出すと、おそらく対抗としてカナダやオーストラリアを引き合いにされると思いますが現在のところ、実在しない18歳未満の児童を被写体とした創作物と犯罪の因果関係を示す科学的な根拠や客観的なデータは一切ありません。逆にこういった創作物が、児童への性犯罪を抑止するという情報は数多いです。「とにかく漫画やアニメが嫌いだから規制したい」という方はともかく「児童への犯罪を少しでも減らしたいんだ!」という目的に対しての効果を求めるなら規制は妥当ではないでしょう。2次元創作物の規制に関しては、今研究をしている最中ということですから引き続き調査を行って、客観的な統計データを集計してそれから2次元創作物も児童への犯罪を助長するという科学的・理論的な根拠をまず得てから規制の検討を進めてもらいたいです。また現在の状況ですが、2次元創作物の規制に関しては今研究中なわけでそれらが児童ポルノに該当するかどうかも未確定な状態ですので関係者の方には、くれぐれも創造者の人権を安易に侵害することのないように充分配慮していただきたい。「準児童ポルノ」というような怪しげな造語を勝手に提唱する事はそれだけで無形の圧力となって、創作者への明確な人権の侵害になっています。科学的、理論的な根拠もないのに、そのような感情的な用語を押し付けた結果該当産業が縮小したらどうなります?「風が吹けば桶屋が儲かる」的な理論ですがきっとその産業に従事しておられる方々の生活がおぼつかなくなってくるでしょう。そしてそういった業界の方々にも、ご家庭があって、お子さんもいらっしゃるでしょう。その子達はどうなります?その子達は親の仕事についてどう思うでしょうか?違法と定まったのなら仕方ないかもしれませんが違法とされたわけでもない、科学的に根拠があるわけでもないのに特定分野の人間を攻撃して、そのご家庭をも蹂躙する事は悪質な弾圧行為ですよね。人権や法律以前に、人間としてとても許せません。繰り返しますが、規制推進派の方の目的は至極当然であり、基本的には応援しています。ですが、目的達成のための手段や考え方に明確な誤りがあります。思慮も足りません。そこを注意深く検証して修正していけばきっと規制推進派の方々の主張は、大勢の賛同と支持を得られると思います。うう、また長くなってしまいました。ごめんなさい。

  3. すいません、先程の私の文章ですが警察の不当逮捕云々の辺りが、自分で読んでも全体の流れがわかり辛かったですね。申し訳ありません。要は、鑑賞目的所持禁止と条件付けをしても悪意もないのに何かの拍子(ウイルスとか)で禁止物が紛れ込んでしまった場合、一旦逮捕されてしまうと、取調べで虚偽の自白を強要されてしまうんじゃないかということです。痴漢冤罪などはほとんどこのケースですね。「け、刑事さん、俺こんな画像知らないッスよ!」「嘘つけ!どうせ見て楽しむために持ってたんだろうが!この変態野郎!」・・・・結構リアルに想像できて怖いです。よろしくお願いします。

  4.  突然のコメント失礼致します。 正直、一部の規制推進派の方は「規制」が目的で、子どもの事はどうでもいいと思っているのではないかと思う事があります。 例えば、現行の児童ポルノ法の15条では「心身に有害な影響を受けた児童の保護」が、16条では「心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備」がうたわれていますが、所轄官庁が決まっていない為に予算がつかず、結果として両条文が形骸化しているという話や、法文が「わいせつ物頒布等の罪」を参考に作成された事で、警察の運用の場で(まるでモザイク無しAVビデオ販売事件)のように「被害者がいない」かのような扱いをされたりしているとの話(http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20081125#1227584248)もあります。 子どもの為を思うなら、まず、同法の中に「所轄官庁を厚生労働省に定める」といった趣旨の法文を加えたり、被害児童がちゃんと被害者として取り扱われるような法文に直すなど、15条や16条がちゃんと機能するように、実効性のある改正をすべきと考えます。 最近は少し変化があったとも聞き及びますが、1999年の制定時からずっと改善されていない「児童の保護」を放置し続けておきながら、未だに「規制強化(特に被害者の無い物に対する規制)」の事ばかり主張される事については「子どものをダシに自らの『嫌いなもの』を消したいと思っているだけなのではないか?」との疑問を持たれても仕方が無いと思います。 単純所持罪についてですが、単純所持は名誉毀損の記事の所持と同様に「人権侵害に当たらないのではないか?」という考え方もあるのはご存じかと思われます。例えば、ある者にとっての不名誉な情報を「流す行為」は具体的な人権侵害ですが、ある者にとっての不名誉な情報を「知って(持って)いる事」は人権侵害には当たりません。そして、児童ポルノを単純所持される事による「虐待の記録が、他者に見られているかも知れない」と言う不安は、名誉毀損記事掲載誌等を所持される事による「名誉毀損記事が読まれるかもしれない」と言う不安と原則的には同じものであり、処罰の対象にはそぐわないという考え方です。 とはいえ、たとえ処罰の対象にはそぐわないかもしれなくとも、同時に「所持されることにより児童が傷ついている」という事実は存在しえますので、ヤハリ、出来る限り「破棄させる」ようにすべきだと思います。ただ、その方法論が、「単純所持を処罰する」というものであるならば、それは必ずしも子どもを護る事には繋がらないと思います。 今回のエントリでも書かれていらっしゃるように、日本の児童ポルノの定義は、所謂ソフトヌードも規制の範疇としているなど、世界的に見てもきわめて厳しいものとなっており、大人だけでなく「子ども」自身が児童ポルノの所持者となりうる恐れがあります。(「子ども」自身が児童ポルノの所持者となりうる点については、多くの者が性的対象者を「自身の年齢に近い者」とする傾向がある事や、NHKの調査(13歳未満の相手とのセックスについて、「してみたい」と積極的肯定回答した男性は、10代(16-19歳)6%、20代5%、30代4%、40代1%、50代8%、60代0%だった「データブック NHK日本人の性行動・性意識」)等によって、そのおそれは十分にあると考えられます。) 17歳の少年が児童ポルノ取締法違反の疑いで家宅捜索中に、飛び降り自殺をしてしまったという悲しい出来事が2006年のブラジルでありましたが、そもそも単純所持は「児童保護の観点から破棄を推進すべきもの」に疑いの余地は無いものの、「処罰の対象とすべきかどうか」については異論が出ているものです。 にも拘らず、「子どもによる、同世代かあるいは少し年下の児童ヌードの所持事例」すら罪に問えてしまうような法律の改正(与党案では「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者」ですので子どもが罰せられる事になります)をする事が、果たして「子どもの為」と言えるかどうか疑問が残ります。場合によっては、単純所持の罰則が重い事で、破棄が進まないという事もありうるかもしれません。 また、日本における「100%近い有罪率」や「取り調べの可視化度合いの低さ」等を考えると、冤罪の可能性も他の主要国に比べて高くなる事が予想されております。そしてその冤罪の被害者は(同年代に対する性的関心の有無、法的知識やネットリテラシー能力の低さ故に)守るべき子どもさえも含まれる可能性が低くありません。  以上のような理由から、「子ども」の為にも「単純所持規制は導入すべきでない」と考えますが、FBIからの要請やシーファー駐日大使の言うように、児童ポルノで金を儲けている業者にお金を渡したりする者を取り締まる事についての国際的な協力の為に、所持についても一定の規制が必要という声があるのも事実だと思います。 そういう現状があって、どうしても単純所持規制をしなければならないのであるならば、民主党案のように「購入もしくは譲り受けた場合で、かつ、正当事由なく所持した場合」に限定する必要があると思います。また処罰規定についてはアメリカでは所持規制の対象となって居ない3号ポルノを外すなどされた方がよいとも思います。 被害者がいないタイプの創作物規制についてですが、特定の創作物が流通する事によって実際に「児童に性的虐待を加えても構わないという風潮が助長されている」なら、一定の規制もやむを得ないとも考えますが、現状を見るかぎりでは、そのような風潮は流布しているように思えず、むしろ児童の保護に対する関心が以前より高まっていると感じております。一概には言えませんが、(比較論として)表現規制が厳しい国ほど人権意識も低く「児童に性的虐待を加えても構わないという風潮」も残っている感すらあるように感じます。 勿論、表現の自由だけでなく「見たくない物を見ないですむ権利」や「親の教育権」等も大切ですので、殺人や暴力表現等の描写と同程度の規制はあってしかるべきだと思いますが、それらは既に(殺人などの描写より遥かに厳しい形で)都道府県条例や自主規制、刑法などによってなされており、これ以上の規制についてはむしろ慎重であるべきだと考えます。 いずれにしましても、万が一創作物を規制するならば、これ以上の保護法益の混乱を避ける為にも、新規立法によって規制するよう働きかけるべきかと存じます。

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