児童ポルノ(4)

mkさん、犬さん、貴重なご意見をありがとうございます。
 
まず、実在の子どもを対象とする児童ポルノの単純所持についてですが、犬さんもmkさんも、(望ましくはないが、やむを得ず)単純所持を規制するのであれば、対象とする児童の定義、構成要件をもっと明確化すべきであるというご意見だと理解しました。
そのためには、与党案の「自己の性的好奇心を満たす目的」という表現では不十分であり、また、対象とする子どもの年齢ももっと限定すべきということでしょうか?
この点に関して、与党案に対する対案として提案された民主党案は「有償で又は反復して取得した場合」という要件を入れていますが、米司法省のオースターボーン部長は有償で取得したかどうか、あるいは反復した取得であるかどうかを立証することは、きわめて困難で、この要件を付加すると、児童ポルノの単純所持を処罰化すること自体が難しくなるとのことでした。
同じ意見は、日本国内の弁護士の方からも出されていたと思います。
また、16歳未満(以下)の子どもを被写体としたポルノのみを児童ポルノとして認定するというのは、「国連子どもの権利条約」およびその選択議定書との関係で無理だと思います。
したがって、18歳未満の者を対象としたポルノグラフィーは、この選択議定書に定める子どもポルノなのです。
日本はこの選択議定書の規定について留保をしていませんから、日本はこの定義にしたがう国際法上の義務があります。
日本の与党案「自己の性的好奇心を満たす目的で」という表現が、個人の内面的動機に関する(捜査側の)主観的判断を含むので冤罪を生むおそれがあるというご指摘がありましたら、それでは、選択議定書の規定にしたがって、児童ポルノを「その主たる特徴が性的な目的による描写であるもの」と特定し、さらに、そのような児童ポルノの「意図的な所持」のみを処罰の対象としては如何でしょうか。
これは、米国における児童ポルノの定義に近いものです。
 
また、日本の警察による不当な捜査の危険性についてですが、与党案(改正案3条)「留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」に付け加えて、不当な捜査に対する不服申し立て制度を設ける旨の規定を設置してみては如何でしょうか。
米国には、このような制度があるそうです。

また、「意図的な所持」であることを立証する責任は検察側にあることを明記することも冤罪を避ける上で有益からも知れません。

 
次に被害児童の保護について。
私も、児童買春・児童ポルノ禁止法の成立に関わった者として、当時より被害者保護の規定が具体性を欠いていることは気になっていました。
この点については、民主党案(改正案15条および16条)に具体的な被害者保護の規定があり、私もこの案に賛成です。
第十五条 厚生労働省、都道府県、児童相談所、福祉事務所、市町村その他の関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童性行為等姿態描写物に描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2 前項の関係行政機関は、同項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
 
「準児童ポルノ」については、犬さんご指摘の通り、米国とカナダでは対応が異なります。
また、以前にも書きましたが、実在の子どもを対象とする子どもポルノは「個人法益」の問題、いわゆる「準児童ポルノ」の問題は「社会法益」の問題とはっきり分けて議論すべきと私も考えています。
その上で、日本では悪質な「準児童ポルノ」をどのように減らしていくべきなのか、は私ももう少し考えてみたいと思います。
 
貴重なご意見をありがとうございました。
 
 
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児童ポルノ(4)」への3件のフィードバック

  1. ご返答、ありがとうございます。毎回非常にわかりやすく回答を頂いて、大変勉強になります。>有償で取得したかどうか、>あるいは反復した取得であるかどうかを立証することは、>きわめて困難で、この要件を付加すると、>児童ポルノの単純所持を処罰化すること自体が難しくなるはい、その通りです。ですから単純所持を処罰化するのは無理だと申し上げているのです。先生は「有償・反復取得を立証するのは難しい。だからそんなの無視して全部逮捕しちまおうぜ!」と仰っているわけですよね?それは誰がどう見ても国家権力による一般市民への弾圧でしょう。いくらなんでも無茶だと思います。少なくとも、有償・反復取得を立証する技術が確立していないのならそれが充分可能になるまで単純所持処罰化は見送るべきでしょう。加えて書くなら、各国の実情を踏まえず一律18歳未満を子供と定義していて、尚且つ児童ポルノ単純所持は処罰化、とするならなおさら環境的・技術的な要因が成熟するまで待つべきです。前回書いたように、既に他国では深刻な弊害が出てしまっていますよ?日本の警察による不当な捜査の危険性についてですがこれについても、「~でしょう」や「~かもしれません」では非常に根拠が希薄です。これについては、完全に問題が解消してからでないと危険過ぎます。先生のご意見からは「悪を取り締まるには多少の冤罪もしょうがないよね~」というニュアンスを感じますが、少なくとも私は非常に怖く感じてしまいます。まさか自分には関係ないだろうと思っていても、いつそういう状況に追い込まれるかわからなくなるのです。痴漢冤罪などの現状をご存知でしょうか?その気になれば簡単に犯罪者にされてしまう状況では安心して生活できません。ここは特に明確に検討して欲しい部分です。>日本では悪質な「準児童ポルノ」をどのように減らしていくべきなのか、>私ももう少し考えてみたいと思います。少し話の論点がズレてしまったかな、という気がしています。まず「準児童ポルノ」という言葉は使わないようにお願いしたいです。先に”非実写創作物が児童犯罪を助長するものかどうか”の研究を進めて、科学的、理論的論拠得てください。そしてそこではじめて、創造者の表現の自由などの人権に配慮しながら規制に関する議論を進めなければいけません。補足説明をすると、そもそもリオ協定での内容に、創作物に関して「漫画やアニメ、コンピュータゲームなど」という指定はありません。日本ユニセフの方は「漫画やアニメ、コンピュータゲームなど=有害なもの(準児童ポルノ)」としていますが、一体どういった根拠でこういう解釈をされたのでしょうか?私の勉強不足なのかもしれませんが、ぜひ論拠を示していただけるとありがたいです。ちなみにリオ協定文中にはバーチャルイメージという言葉がありますがこれは外国人と日本人の感覚の違いですが、通常、例えば欧米ではバーチャルイメージと言えば実写を加工したものか、実写に極めてに近いものを指します。(バーチャル=仮想の現実)例として欧米ではTVゲームを”ビデオゲーム”と呼ぶなど、あくまで実写志向の強い受け止め方をします。日本で広く普及している人物描写形態(漫画等で、目が非常に大きいとか髪の色がカラフルとか)は「仮想現実」ではなく「完全な仮想・想像の産物」として認識されます。日本漫画などのディフォルメされた表現描写は根本的にバーチャルイメージに含まない可能性が高いです。そして、一番聞きたい事への回答がされていないようなのでできればぜひお聞かせ願いたいのですが前回述べたように、表現の規制により重大な人権侵害を受けた側の人間への配慮はないのでしょうか?※関連産業従事者などへの経済的・精神的な負担という意味です。片方の人権を守るために踏み潰された、もう片方の人権はどうなるのでしょうか?「今日からお上が犯罪だと定めたんだから、お前ら違法な!え?これからどうやって生きていけばいいかって?そんなの知らんよ(笑)ホームレスにでもなれば?」とでも言うのでしょうか?今の世情からしても、これも無茶な話だと思うのですが・・・。そもそもこういう問題を調整するための話し合いはなされていないのしょうか?文を簡潔にしようとするあまりちょっと直線的な表現が多かったかもしれません。お気を悪くされたなら、大変申し訳なく思います。毎回長文ですいません。よろしくお願いします。

  2.  お返事ありがとうございました。>与党案の「自己の性的好奇心を満たす目的」という表現では不十分であり、また、対象とする子どもの年齢ももっと限定すべきということでしょうか? 「自己の性的好奇心を満たす目的」や「意図的な所持」という表現では不十分です。 日本における3号ポルノの定義は「子どもの権利条約」の選択議定書で規定されている児童ポルノの定義より厳しいものであり、3号ポルノの公然陳列が違法化されていない国も多々あります。それらの国に設置されているサーバー上にある「日本では児童ポルノとされているが、当該国ではそうでない画像等を、児童が意図的に性的好奇心を満たす目的で所持してしまう」という可能性があるからです(その行為は褒められたものではないかもしれませんが、被害の度合いとのバランスを考慮すると、行き過ぎでしょう)。また、「10年以上前に買って所持し続けている週刊誌等に16~17歳位のヌードグラビア等がまぎれていた場合」なども考えられます。これらの場合でも所持は「自己の性的好奇心を満たす目的」であったり「意図的な所持」かもしれませんが、それらを「処罰」するのは行き過ぎだと感じます。 これらのような「悪質で無いケース」については、厳罰化ではなく、没収出来るようにな形で違法化するなどして、総量そのものを減らしてゆく工夫をすべきだと考えます(1号2号ポルノの譲受については後述します)。>この要件を付加すると、児童ポルノの単純所持を処罰化すること自体が難しくなるとのことでした。 目的は処罰化ではなく、あくまでも児童ポルノの所持や流通を減らす事であり、「処罰化出来ない事」は本来の問題ではありません。入手を処罰するならば「廃棄すれば処罰されない」ため、廃棄が進むことも考えられますが、処罰化を目的としてしまうと、法の施行後は「廃棄した事がバレても捕まる」ために廃棄が進まず、拡散の危険性はむしろ増すのではないかと危惧します。事実として、単純所持を処罰化している国の児童ポルノ流通量が少ない訳ではありませんし。>16歳未満(以下)の子どもを被写体としたポルノのみを児童ポルノとして認定するというのは、「国連子どもの権利条約」およびその選択議定書との関係で無理だと思います。 私も、「児童ポルノの年齢の定義」については今のままであるべきだと考えます。但し、単純所持については選択議定書でも留保が認められています。ご存じのとおり、日本では単純所持を規制するのは弊害が大きすぎるという理由で留保したうえで批准致しました。とはいえ「批准出来たからそれで終わり」という話でもありません。日本における「児童ポルノの年齢の定義」はそのままに「罰則付きでの譲受規制は(3号ポルノを外したり基準年齢を引き下げた)別途の枠を設ける」ようにすれば、様々な弊害も減らせます。>選択議定書の規定にしたがって、児童ポルノを「その主たる特徴が性的な目的による描写であるもの」と特定し、さらに、そのような児童ポルノの「意図的な所持」のみを処罰の対象としては如何でしょうか。。 現行法では「肌の露出の少ない性的虐待」は規制の対象となっておりませんので、それらも規制出来るよう定義を選択議定書に近づけるのは賛成ですが、結果として「(局部アップ以外の)児童ヌード解禁」とならないよう注意が必要かと思われます。>不当な捜査に対する不服申し立て制度を設ける旨の規定を設置してみては如何でしょうか。>立証する責任は検察側にあることを明記することも冤罪を避ける上で有益からも知れません。 立証責任が検察側にあるのは大原則です。「不服申し立て制度を設ける旨の規定を設置」については、出来ればその方が良いと思います。そのうえで、(繰り返しになりますが)「罰則付きでの譲受規制は(3号ポルノを外したり基準年齢を引き下げた)別途の枠を設ける」ようにすれば、かなり弊害が減らせるでしょう。 被害児童の保護については同意見のようでなによりです。外務省にあったリオ会議の資料では、あたかも日本が児童の保護に力を入れているかのように記述されており、正直ゲンナリしてましたので。いずれにしても、被害児童の保護が進まなかったのは、「まず規制ありき」の拙速な議論や改正をしてきた事が問題だと思っております。与党案のゴリ押しでは、また同じ事の繰り返しですので、そろそろ原点に立ち返って「真に子どもの為の改正」となるように、議論を尽くすべきかと存じあげます。 長文、失礼致しました。

  3. お疲れ様です。私の、単純所持処罰化反対の意見に関して”警察の不当逮捕による人権侵害を危惧する根拠”として少し補足・追加したいと思います。今日、以下のようなニュースを見ました。「取り調べで問題行為15件  監督制度3カ月半・警察庁」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081219-00000118-jij-sociこの記事を見る限りでは、日本の捜査体制には先進諸国に比べてまだかなり問題があります。やはりこういった問題が解消していないのに新たな冤罪・人権侵害の温床になるような規制を行うのは無理なのではないでしょうか?よろしくお願いします。

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