トマス・バーネット『戦争ななぜ必要か』

トマス・バーネットは現在、世界で最も注目されている軍事戦略の専門家。
1962年生まれで、1990年にハーバード大学より政治学の博士号を取得。
1998年より2004年まで、アメリカ合衆国海軍大学の上級戦略研究員および教授を務める。
2004年にEnterra SolutionsというEnterprise Resilience Management(組織の回復力・弾性)に関するコンサルタント業務を専門とする会社のSenior Managing Director(上級取締役)に就任。
 
バーネットは、冷戦後の世界において必要な安全保障のためのルール・セットをついて研究してきた専門家である。
冷戦下では、安全保障のルール・セットは資本主義と社会主義という二分された世界経済の現実を反映していたのに対して、冷戦後の世界では、グローバリゼーションがもっとも主要な経済現象となった。
バーネットは、この点に踏まえて、世界を「積極的にグローバル・エコノミーに加わろうとする地域」=「機能する中心(functioning core)」と、「グローバル・エコノミーに
加わらず、そこでつくられるルール・セットに背を向ける地域」=「統合されない間隙(non integrating gap)」に二分する。
 
バーネットは、2003年当時、ややナイーブにグローバリゼーションの経済上のルール・セットを多くの国が受容すれば、安全保障に関する新しいルール・セットも同じ程度に認められ、「経済のルール・セットが公平で公正に適用されれば、”負け組”あるいは”不満分子”も、そのルールの範囲内で、修正、補償などを求める政治的な機会が十分(に与えられる)」と述べている。
昨年来の世界的大不況の下でグローバリゼーションの経済的ルール・セットの見直しが進んでいる今日、私たちは、このバーネットの見方に100%賛同することは出来ない。
 
しかし、「1990年代には、経済が政治に先行し、テクノロジーが安全保障に先行した」というバーネットの洞察は依然正しいように思える。
前ハーバード大学教授で、現在、カナダの自由党党首マイケル・イグナティエフも、経済がグローバル化する一方で、政治は国民国家という枠を超えることが出来ない冷戦後の世界の構造的不均衡を繰り返し指摘していた。
 
バーネットは、今日の世界を、人(移住)、エネルギー(基本的に石油と天然ガス)、長期的投資(外国からの直接投資)、安全保障(アメリカの安全保障”サービス”を、局地的な”マーケット”に輸出する)の4つの流れの観点から見るという世界モデルを提示し、いずれも余っている地域から不足している地域への自由な移動が実現することが望ましいと延べ、「本当に築く価値のある未来を手に入れるためには、ギャップ全体を縮小させる以外にはない」と主張している。
 
中でも、安全保障について、米軍は今後、ハイテクの大々的な破壊活動を専門とするリバイアサン軍と、よりローテクで、安全維持と日常的な危機管理を専門とするシスアド軍に分化されるべきであるという意見は注目に値すると思う。
 
さらに、アメリカ合衆国によるルール・セットの失敗例としてウィルソン(国際連盟の失敗)、成功例としてトルーマンと挙げている点も興味深い。
単なる理想主義では現実的に機能し得るルール・セットを作れないということは、素朴なリアリズムに基づく政策が必ずしも望ましい成果を生まないということと同様に、私たちが留意しなければならない点である。
 
4月2日には、そのバーネットが評価するG20が開催される。
日本のNGOも、具体的な政策提言に動いている。
 
私も、自分の出来ることを精一杯やってみよう。
 
 
 
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