Richard J. Samuels, Securing JAPAN, Cornell University Press, 2007

Richard J. Samuel先生は、MITの政治学の教授で国際学研究所の所長、MITにおける日本プログラムの創設者でもあります。
要するに、米国における日本学(Japanology)の代表的研究者の一人ということです。
 
このサミュエル先生が2007年に公刊したのが、『日本を安全にする(Securing Japan)』。
中国の台頭。
朝鮮半島における政治的不安定要因。
米国の衰退。
冷戦後の北東アジアにおける政治情勢の変化の主要な要因として、サミュエル教授がこの本の中で挙げているのが、この3つ。
 
この大きな構造的変化の下で、日本は戦後の吉田ドクトリン、いわゆる軽武装経済優先主義の国家戦略の見直しを迫られているというのが、サミュエル先生の観察です。
サミュエル先生は、日本は明治維新後、国際社会における名声(prestige)と自主独立(autonomy)の2つを国家的な達成目標として追求してきたと定義した上で、この2つの国家目標を実現するための戦略にもとづき、日本の政策決定者たちを4つにグループ分けしています。
1.ふつうのナショナリスト(normal nation-alists)
小泉、安倍元総理が代表。日本の強さを強化することで、国際社会における名声を確保しようとする人々で、日米同盟のグローバル化のための日本の軍事力強化にも積極的。
2.新自主独立派(neoaoutonomist)
ナショナリストと同様に、日本の国力強化によって、独立性を獲得しようとする人々で、ナショナリストとは異なって、日本独自の核武装や米国から独立した軍事力を持ちたいと考えている。
3.並みの国家を目指す国際派(middle power internationalists)
経済的繁栄を通じて、国際社会における名声を確保するために、世界政治における日本の役割を減らすべきと思っている人々。
吉田ドクトリンに近い立場で、東アジア経済共同体の創設に熱心な人々。
4.平和主義者(pacifists)
経済的繁栄を通じて、独立性を確保しようとする人々。
北東アジアを非核地域にすることを求める。
 
サミュエル先生は、このうち、1と3の間の争いが戦後日本の政治の大枠を定めてきたと観察している。
 
私自身は、永井陽之助先生のフレームワークを以前援用させていただいたことがある。

永井は、1980年代初め、日本の防衛論争を説明するために「福祉⇔軍事」「同盟、安全⇔自立、独立」の2つの国家目標の対立軸からなる座標軸を提示した(永井陽之助、『現代と戦略』、文芸春秋社、1985年:18頁)。

 

同盟

安全

 

 

福祉

 政治的リアリスト

 軍事的リアリスト

 

軍事

 

 非武装中立論

日本的ゴーリスト

 

 

自立

独立

 

その上で、永井は防衛論に関する立場を以下の4グループに分類する。

A(政治的リアリスト):福祉を軍事より優先させるために安保体制を選択する立場で吉田茂元首相などに代表される。

B(軍事的リアリスト):日米安保は重視するが、同時に自衛力の強化も自前で図るべきと主張する人々で、中曽根元首相などの立場。

C(日本的ゴーリスト):国家の自立を優先し、あくまでも自力で日本の安全保障を確保しようとする立場。

D(非武装中立論):福祉と安全をともに追求する立場。80年代までの社会党路線。

手嶋龍一によると、80年代を通じて米国は一貫して日本におけるAの立場を批判し、Bの力が日本国内で高まることを期待してきた(手嶋龍一、『日本FSXを撃て』新潮文庫、1994年:341-344頁)。永井は米国が過大な期待を寄せてきたB派の中には隠れC派が少なくないこと、そして米国はこのC派の拡大をもっとも恐れていることを指摘している(永井陽之助、1985:22-23頁。つまり、従来、B派を増やそうという圧力がD派を勢いづけさせるという理由で、対日干渉を控えていた米国は、89年の冷戦終結によって社会党(D派)への支持が失われる中で自主独立派(B派)への支持を明確にした結果、実はC派の成長を促進しているかも知れないのである。

C派の主張はB派が基本的には対米依存を容認するのに対して、自主独立路線としての一貫性があり国民に受け入れられ易いように思われる。さらに戦争体験の風化と国民レベルでのナショナルアイデンティティの追求の高まりは、C派の対外的強硬路線を支持し易い基盤を生み出している。

 したがって、今後、日本が全面的対米依存でもなく、軍事主義的な自主独立路線でもない「第三の道」を確立するためには、自由民主主義という価値をナショナルアイデンティティの中に定着させるという知的営みが不可欠なのである。
 
私の主張は、最後の2行に書きました。
そして、自由民主主義の基層理念は基本的人権の思想であり、この思想を定着させることが日本にとって不可欠というのが、私の考えです。
この信念に基づいて、これまで人身売買問題を含む子どもの権利の活動、青少年の社会参加の促進、そして昨年の洞爺湖サミットに向けたNGO活動に取り組んできたわけです。スマイル
 

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