最適な日本の政策立案システム?

昨年夏に民主党政権が出来て、民主党の政策審議会が廃止されました。
「与党と政府は一体」というのが、その理由だったと記憶しています。
 
この辺りの経緯・背景を知る上で最適なのが、飯尾潤『日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ』中公新書(中央公論新社、2007年)。
この本は、2008年度読売・吉野作造賞、2007年度サントリー学芸賞をダブル受賞したという傑作。
 
日本の統治構造を取り上げた本として、カレル・ヴァン・ウォルフレン『日本・権力構造の謎』上・下(ハヤカワ書房、1990年)は有名だけど、日本の指導者層を「アドミニストレーター」と総称するのはあまり歯切れが良くないなぁ、と思った記憶があります。
これに対して、飯尾先生の『日本の統治構造』は、以前役所にいた自分の体験からしても、ナルホドと納得できる分析になっています。
 
明治憲法体制は、権力集中による独裁者を生み出したことによって崩壊したのではなく、意思決定中枢を欠くために、指導者がお互いに手詰まり状況に陥り、事態打開のための決断が遅れ、積み重なった既成事実が選択肢を狭めるなかで、対米開戦といった破滅的決定を下し、崩壊に突き進んだのである。(同17頁)
というのは、すでに日本史の世界では定説。
 
この反省に立って、戦後の日本では「有権者が国会議員(衆議院議員)を選挙して選任することにより、国会議員は有権者の代表として、その権限を得る。次に国会議員(衆議院議員)が内閣の組織者として首相(内閣総理大臣)を選任することで、首相は内閣を組織し、それを運営する責任者としての権限を得る。さらに、首相が、行政権を行使するために、複数の大臣(国務大臣)を選任し、内閣の構成員とする」(同21頁)議院内閣制が導入された。
要するに、本来、議院内閣制というのは、国民が総選挙を通じて責任政党を選び、首相を選任し、その首相(政権与党)が行政機構をコントロールする制度なのだ、というのが飯尾先生の説明。
 
ところが、実際には、内閣総理大臣を他の大臣と同レベルに見なす戦前の意識と制度が残存し、内閣は各省大臣がそれぞれの省益を代表して集まる場に長年とどまってきた。
この制度は、1980年代までは有効に機能していたというのが、飯尾先生の評価である。
要するに、審議会を通じた業界の意見を反映した政策作りを各省庁を担い、また政権与党(自民党)が党内の政策調査会で独自の政策作りを官僚の力を借りつつ行い、さらに野党の意見にも一定の配慮を示すという多元的な調整が行われた結果、実質的には有効な政策が適切な時期に企画・実施されてきたわけである。
私も、この評価には同感です。
 
ところが、この精妙に作り上げられた多元的権力システムは、権力の中枢がないために、大きな時代の変化やトレードオフにある政策間の最終決定を迅速に行うには適していなかった。1980年代半ばにはJapan as No.1と称されていた日本が、冷戦終結後、急速に失速してしまったのは、そのためである。
1990年代以降、日本政治の機能不全が明らかになり、さまざまな改革の努力が重ねられながら、なかなか成果が上がらなかったのも、「成功したシステム」を、別のシステムに移行させるのが難しかったからである。(同177頁)
 
飯尾先生がこの日本の政治の行き詰まりに対する処方箋として提示しているのが、政権交代によって、国民が政党、首相、マニフェストを選択する「議院内閣制」の確立である。
この観点からすれば、昨年夏の政権交代は歴史的意義を持つ出来事であったということになる。
 
その結果、「首相主導の内閣制が機能しはじめると、与党との関係も見直さざるを得ず、内閣と与党の一元化の問題が出てくる」「与党の政策審議機関も、各国務大臣が、副大臣などを使ってその連絡・調整を行う舞台となる必要がある」。(同184頁)
 
これが民主党が政策審議会を廃止した理由である。
問題は内閣と与党が一体化した体制の下で、政府に入らなかった与党議員の意見をどのように政策形成プロセスに反映していくかで、従来のような利権の温床・関係省庁とのネゴの足場ではない政策決定プロセスって、いまの日本社会では、どういう形が一番望ましいのでしょうね。
 
日本の政治もだんだんとエクサイティングになってきました。
 
冷戦が終わって国際情勢が大きく変化するなかで、迅速かつ一貫性のある方針を打ち出すことが出来ず、今やJapan Nothingと世界から揶揄されるようになっている日本。
可及的速やかに体制を整えて、世界のステージに復帰したいものですね。スマイル
 
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