人生万事塞翁が馬?

伊藤元重先生の『経済危機は世界に何をもたらしたか 2010年、政策転換の行方』(東洋経済新報社、2009年12月)を読み返しています。
 
この本には、「日本の経済力を反映する実質為替レート」が長期的には円安に向かっているという記述があります。
要するに、日本人の一人当たり所得をドルやユーロなどに換算した額がだんだんと小さくなっているということです。
伊藤先生はこう書いています。
円安になればそれだけ海外から輸入する商品の値段が高くなる。日本は食料や石油など一次産品の多くを海外からの輸入に頼らざるを得ないので、円安になることで一次産品の価格が上がることは日本人の生活には厳しい打撃となる。一次産品だけでなく、海外から買わなくてはいけないあらゆる商品が割高になってしまうのだ。
もちろん、すでに強調しておいたように、円レートが将来ますます円安方向に向かっていると決まったわけではない。ただ、仮にそのようなトレンドが続けば、私たちの将来の見通しはかなり暗いものになってしまう。
 
しかし、円安になるということは、日本からの輸出が有利になるということでもある。
何よりも、輸入品が高くなれば、国内で代替生産しようというインセンティブが高まると思う。
すると、円高で海外に進出せざるを得なかった製造業も日本に戻ってくるのではないか。
少子高齢化で社会全体の活力が低下している日本にとって、これは決して悪い方向ではない。
 
最近の学生を見ていると、グローバル志向で世界を舞台に活躍したいと考えているグループと、日本社会で安定した、ゆとりのある生活を送りたいと考えているグループに二極分化しているように思う。
私は国際派を育てるのが仕事なので、安定志向の学生にはもう少し海外に目を向けるようにいろいろと工夫するわけなのだけど、少しマクロなレベルでみると、こういうグループは今後の日本社会にとって、とっても重要な集団なのかも知れない。
穏やかな人柄で、思いやりもあり、協調性にも富んだ地元志向の若者が増えれば、東京一極集中のいびつな社会構造も改善されるだろうし、日本がより住みよい社会になることは間違いない。
 
いま日本社会が直面している最大の問題は、信頼の欠如である。
なぜ、そうなったかははっきりしていて、グローバル化に対処しようとして、市場原理(と多くの日本人が信じていた)考え方を導入した結果、日本の高度な生産性を支えていた情緒的な一体感が組織から失われたためである。
そして、いま、この市場原理主義の見直しが進んでいる。
生産性、効率性を上げるために、そしてNGOなどの非営利活動の発展にとっても、最大のカギは信頼関係の確立である。
個人主義的でバリバリ活躍したい若者はどんどん海外に出ていき、のんびり安定した生き方を選択したい若者は国内でそういう生き方を選択する。
まぁ、考えてみると、これこそ多様な生き方が許容される「豊かな社会」というものである。
 
日本という社会は考えてみると、けっこうイケているのかも知れませんね。
 
 
 
 
 
 
 
 
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