『ともに公共哲学する 日本での対話・共働・開新』

京都の公共哲学共働研究所所長の金泰昌先生の最新作。
昨日、一気に読んでしまいました。
一番興味深く思ったのは、第4部 東アジア発公共哲学の思想的源泉をともに探る 2.日本人の実心(まごころ)とはなにか 「公心」・「私心」そして「公共心」との関連を問う
 
金先生は、「今日は、日本人の実心―本心・真心・誠心・即ち、「まごころ」とは何かについて話したい」と切り出されています。
これに対して、3人の日本人の先生方は、日本思想史や東アジア思想の知識に基づいて解説を試みています。
しかし、片岡龍先生が指摘されているように、日本人の本心は日本人自身にとってもはっきりしておらず、精密な思想史的説明もそれを明らかにする上で必ずしも有効ではないようです。
これは、西ヨーロッパ社会とか中国などと比較した場合の、日本の特異な点だと思います。
たとえば、西ヨーロッパにおける「自己」とは何か?を明らかにするためには、テイラー博士が『自己の諸源泉』で展開されたように、その思想史的系譜を探求すれば足ります。
中国の精神史も、儒教を中心とした歴史を振り返るとことで大方理解できるように思います。
これに対して、日本人の「まごころ」とは何か?という問いに、日本人として応えることができないというのは、どういうことなのでしょうか?
 
金先生はこう書いています。
「何故、今更、日本人の実心―本心、真心、誠心―にこだわるのか。それは今まで一緒に公共哲学の対話活動をすすめてきた共働参加者たちの中に公共哲学の「論」はあっても、そこに「心」が込められていないとしか言いようながない場合が多々あったという実状認識があり、それはとても残念なことであるという反省と苦悩があるからです。いや、「心」がまったくなかったというよりは、真心、本心、誠心ではなく、仮の・偽りの・名(だけ)の心しかなかったというのが正直な実感であります。どんなにもっともらしいことを言い続けても、それが当の本人の本心・真心・誠心ではないということがわかってしまえば、そこに信頼を置けなくなるわけです」
 
日本の知識人の知的営みとその歴史自体が、日本人の「まごころ」を明らかにする上で役立たないということは、普通に考えると、これまで日本の精神史であるとされてきたものが仮の・偽りの・名だけのものであったということです。
確かに、武田康弘さん@白樺教育館が指摘するように「思想を語ることは、権力者と一部の選別されたコメンテーターのみに許される行為」(117頁)と考えられている日本社会では、自分の本心を言語化するという訓練を大半の日本人が受けていないことは間違いありません。
というより、自分の本心を持たないほうが、この社会では安全な人生を送れるので、誰もが無意識のうちに、そういう「無私」の生き方に従っている結果、それが常識になってしまっているということだと思います。
日本では、民主主義=話し合いで全てを決めることという神話が存在していて、本当に非効率的な話し合いが延々と続くことがあります。
なぜ、非効率的かと考えると、まずリーダーが存在せず、その組織の方向がはっきりしていないことが少なくない、次に一人ひとりの意見がはっきりしていないので、その「場」で一番声の大きな人間に議論が牛耳られ、その結果、決まったとされることに対する、参加者全員の正統性の感覚がないので、その結論も守られることなく、結局、話し合いとは「ガス抜き」に過ぎないということになりがちであるということだと思います。
 
しかし、このグローバル化の時代に、そういう以心伝心だけでは社会も組織も回らないので、次第次第に日本社会全体が普遍的なルールに移行しつつあるのだけど、これまで長年にわたってしたがってきた思考形式はそう簡単には変えられるものではなく、現在はまさに移行に伴う混乱期という状況だと思います。最近、日本の若者たちが異常なまでに内向き、安定志向になっていると指摘されるのだけど、これまで自明の原理と考えていた社会の暗黙のルールが崩れ出せば、誰でも不安になり、内向きになるのは当然。
特に、日本では新しい行動原理が提示されていないのだから、若者たちが不安になるのは当たり前だと思います。
 
これは、なかなか根の深い問題です。
 
 
 
 
 
 
 
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