先崎彰容『個人主義から<自分らしさ>へ』(東北大学出版会、2010年)

最近、東北大学川内キャンパスにある中央図書館に出かけた際に見かけて、手に取ったところ、たいへん興味深い内容なので、すぐにamazonで注文し、今朝読んでみた。
先崎さんは1975年生まれなので、まだ30代半ばなのだけど、尖鋭な時代感覚と問題意識を持つ、優れた思想史研究者だと思った。
 
先崎さんは、(私の理解では)「大きな物語」が最終的に解体し、人間の「動物化」、原理主義の台頭、生きることに意味を見いだせない人々が現出した1990年代以降の日本社会に対する一種の危機意識から、日本近現代思想史を振り返り、そこに現代と類似の「大きな物語」終焉の時代があったことを「発見」し、それぞれの時代における代表的な知識人が、混乱の中で、新たな生きる原理として何を見出したのか、という視点から、福沢諭吉、高山樗牛、和辻哲郎の思想を解釈し、先崎流日本思想史を提示する。
見通しのきいた、すばらしいパースペクティブを持つ研究書だと思った。
 
但し、先崎さんは過去の原理をそのまま現代に蘇らせようとか、現代日本に対する具体的な処方箋を提示しているわけではない。
「歴史家の言葉は陽動のためにあるのではなく、現在には失われた過去を言葉で取りもどし、見えない敵を怯える現代人のまえに見えるようにすることである」
「現実に翻弄され、ながされかけたとき、棹さす繋留点こそ歴史と言葉なのではないか」(同書230頁)
 
今日の日本では、未来への展望が見えない混迷の時代が続いているけれど、こういう時代こそ優れた思想家を生むのだろうと思った。
 
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