孫歌『竹内好という問い』(岩波書店、2005年)

この本も素晴らしい作品です。
 
戦後日本には、単なる共同体のメンバーとしての「国民」しか存在せず、そこには公民としての「国民」がない。
その結果、「(公民としての)国民」としての共同性を持たない私的個人および小集団のエゴイスティックな雑居的状況と、官僚政治の制度的な確立と硬化が共存するという事態が進行した。
これは、まさに、今日の日本そのものであるという気がする。
孫さんは、竹内好がこの課題に西洋近代思想にのっかって外部から批判するという立場からではなく、日本社会の土着の感情、言語化以前の思考から日本のモダニティを可能とする素材を探そうとした思想家であったと評価している。
しかし、同時に、孫さんは今日の世界においては、「現代社会における民族の自信を、直観的・非理性的な感情によって支えることはできない。国際的な視野および状況に密着した緊張感が必要であり、また伝統の継承を契機とする自己否定と自己の再構築が必要である」ことを自覚している。
 
孫さんは、また、竹内が「アジアは排他的な意味で西洋文明に対抗することはできず、西洋文明を内在化させる歴史的プロセスの中で独立した文明を築かねばならない」ことを強調していたことに言及している。
 
「日本人の「日本人」としての文化アイデンティティを否定的な批判のみによって解消することは不可能であり、何らかの再構築の形や思想の可能性が与えられないと、それは「無言の不服従」もしくはより破壊的な形で突然表出する」
 
戦後日本が未解決のまま残してきた宿題を明確に提示した、素晴らしい作品だと思いました。
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