森本敏『日本の瀬戸際』(実業之日本社、2011年3月3日)

この本は、昨年(2011年)3月3日に出版され、私は翌日に書評を書き始めたのだけど、東日本大震災によって中断してしまっていた。

「今、世界の中で東アジアは最も危険度が高いエリアと言える。おそらく、2011年から2012年にかけて、この地域における緊張度は一層高まるであろう。」という書き出しで始まる本書は日本の現状に関する深刻な危機感を提示して終わっている。

「しかし、よく考えると、深刻な問題は東アジアにあるのではなく、日本の中にあるのではないか。危機が起こっても政府と与党がうまく機能しないこと、見通しのないまま決断が行われていること、決断のプロセスが不透明であること、いつまでたっても防衛力を他国のように適切に活用できないこと、平和ボケのままの国民がいること。その一方で、一部に極端な右傾化傾向が見受けられること、普天間基地問題に代表される日米同盟という国家として最も重要な安全保障政策が解決できない事態になっていること、…」
「確かに、この国は国家として機能していないのではないか。」

いま、読み返すと森本さんの洞察はほんとうに正鵠を射ている。

それでは、日本は何をすべきなのか?
「日本としては、米軍の持つ重要な基地機能を安定的に維持することと、日米同盟協力を一層緊密化させるため努力することが、日本の国益追求の観点から見てもきわめて重要である」
「なぜ、沖縄を本土と比べて差別するのか。どうして本土の安全のために沖縄だけに米軍基地を押しつけるのか、という問題に真剣に取り組まなければ、普天間基地問題は前に進まない」
「結局、この問題を前に進めるカギは、海兵隊の活動を広く日本本土でも受け入れるための「共同使用の拡大」による負担の軽減である」
「そのためには、沖縄に駐留する米軍、特に海兵隊の活動・訓練機能をできる限り、本土に移転するやり方を抜本的に検討する必要がある。英国にある米軍基地のように、自衛隊の基地・施設をすべて米軍が使用できるようにして、その代わりに米軍基地を自衛隊が管理し、使用できるようにする。米軍基地の管理・運営を基本的に自衛隊が担当する。米軍基地に雇用される従業員を自衛隊が雇用する」
「普天間基地の代替施設は日米合意通りに辺野古周辺に作るとしても、この施設も自衛隊で管理する施設にして米軍と自衛隊の共同使用にするというやり方がある。さらに、九州一円に米軍の訓練施設を改めて探す努力をすべきである。普天間基地問題が迷走していたころ、十分な検討をせずに放置した離島の飛行場施設についても、改めて検討すべきであろう」

「海兵隊は将来、アジア太平洋において固定的な基地で運用されるのではなく、地域全体を動き回って柔軟に展開し、抑止機能を発揮する体制になるであろう。・・・こうした動きによって、米国がアジア太平洋地域の各地を使用したり、展開することにより、その分だけ沖縄の負担を軽減できる可能性は高い。・・・そうなると、グアム基地をできる限り早期に戦略基地化することが南シナ海、東シナ海に進出する中国海軍への対中戦略上必要となる。」

森本さんの視点、提言内容にはもちろん賛否両論があるのだけろうけれど、優れた安全保障の専門家の提言として本書は誠実に向かい合う価値が十分にあります。

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