世界の大学革命

「世界でもっとも優れた高等教育機関のもっとも優れた教師のもっとも優れた教育を世界の人々に無償で提供する」という理念を掲げて2012年にオンライン教育プラットフォームを運営する「組織コーサラ(Coursera)」を立ち上げたスタンフォード大学のダフネ・ケラー教授は、ロンドンで開催された教育工学関係の学会において、「オンラインで学位取得可能な講義を提供する上での技術上の困難はすでに克服された」「世界のトップ大学が単位取得可能な講義をオンラインで公開する準備はすでに整った」「(それが)今後5年以内に実現しないとしたら、それこそ驚くべきことだと発言したと伝えられています。

一方、毎年高騰する大学の学費が多くの意欲と能力のある学生から高等教育の機会を奪っているという反省から、安い学費で世界最高の教育を提供することを目指すまったく新しいコンセプトの大学も生まれています。2014年9月1日に米国サンフランシスコで開校した米国の4年制総合大学のミネルバ大学は、(1)最新IT技術を活用した少人数・セミナー形式の授業、(2)7つの国際都市で全寮生活を送りながら、現地のインターンプロジェクトに参加できる機会、(3)世界各地から集まった多様な学生からなる多文化学習環境、を年間約1万ドルの学費で提供しています。

池尾和人教授(慶応大学、経済学)は世界の今後の技術革新と経済成長について、ノースウエスタン大学のロバート・ゴードン教授とマサチューセッツ工科大学のエリック・ブリュルフソンとアンドリュー・マカフィーによるまったく異なった2つの見方を紹介しています。( 池尾和人『連続講義・デフレと経済政策』日経BP社、2013年7月)

ゴードンの基本的な考え方は、基幹技術の発明とその社会的普及が経済成長をもたらすということである。したがって、基幹技術が発明されなければ、あるいはその社会的普及が完了すれば経済成長も終わることになる。一方、基幹技術が発展し、その潜在的な力が全面的に発揮されるようになるには、社会全体の仕組みが、その技術を活かすものに根本的に作り替えられる必要があり、それには100年にも及ぶ長い時間がかかるとされる。ゴードンによると、第1波の産業革命につながった基幹技術は蒸気機関、綿紡績、鉄道などであり、1750年から1830年の間に集中的に発明された。第2波の産業革命を引き起こした機関技術である電気、内燃機関、室内配管を伴う上下水道技術などは1870年から1900年の間に発明され、1950年から1970年の間に社会全体を転換させる原動力となった。ゴードンは、1960年頃よりはじまったコンピュータとインターネット技術は経済成長に大きな影響を及ぼす基幹技術ではなく、現在の経済不況は新たな基幹技術が生まれていないという構造的な問題に起因しているのだと評価している。

ブリュルフソンとマカフィーは、情報通信技術(ICT)の発展はすでにかなりの影響を社会と経済に与えており、今後さらにその影響力が加速度的に高まっていくと予想している。いままで人間にしかできないと思われてきたことが、どんどんと機械にもできるようになってきており、機械によって人間の仕事が奪われるという状況が広範囲に生じている。筋力を要する仕事が機械によって代替されたのに続いて、現在ではそこその知的作業が機械(コンピュータ)によって代替されるようになっており、その結果、技術的失業の問題がさらに深刻化している。したがって、企業レベルでも、社会レベルでも、組織革新を進め、人的資本への教育投資を強化し、新たな基幹技術であるICTへの社会全体の適応を促進する必要が高まっているのである。

高等教育界の最新の動向を見る限り、未来予測の軍配はブリュルフソンとマカフィーに上がっているように思われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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